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今日カウンセリングに行ってきたのですが、なんかわたくし病気とかいろいろ発見したけど総じて生きててよかったなあと最近思うんですう、と先生に云ったら、ものすごいほめられました。自分を投げ出さず、自分を理解し、自分とつきあう、というのは大事なのだそうですよ。まあわたくし自分がきらいでないです。と思うようになりました。ええ。まじで。自分の自意識と、自分の存在がつながったというかね。わたくしはなにかにつけ客観的になってしまう見かたを放棄することはできないけれど、そんな傍観的な人生の中にでも、なにか躍動感があるんだなあという感じが最近します。
わたくしこの歳になるまでただなんとなく生きてきたわけだけど、いろんなことがつながってわたくしという人間ができあがってきたんだなあ、と思うと、なんとなくすごく考えてしまう。で、ああやっぱりいろいろ、無駄ってないのねえ、とも思う。にじゅううんねんかん、棒にふったわけでは、まあないんだなあと思うな。いまようやくわたくしがわたくし自身の自意識と感覚でもって世の中を渡りだしたのだとしてもね。いまようやく自分で自分というものを、発見したのだとしても。
だからわたくしもっともっと優しくならないといけないと思います。この世界に対して、あらゆる存在に対して。他人との境界線を乱さず、融和的でありたいと思うな。もちろん、どうしてもこの世の中にはすきになれないひと、というのもいるわけだし、すきになれないいきもの、もいるわけだけれど、だからといってその存在自体を否定することはないわけで。
なんだか、もっともっと大きい存在にならないとだめだなあ。身体とか意識を超えて、もっと全体の中の一部でありたい。神道では我々の魂は神の分け御霊、つまりわれわれ自身が神様のちいさな種なんだよう、といっているのだけど、その種を大事に育てるのもまた、とても大事なおしごとではないかな、と思った日でした。
つづきからネタです。この話とはまったく関係なくいちゃこいてるジャキリです。
目が覚めると雨が実に軽快なリズムで(アレグロ的だった)屋根と戯れていたのでキリコはうれしくなり、ずぶ濡れになるつもりで外へ出ると、雨のにおいを嗅ぎながらあたりを歩きまわった。ふりかえって我が家を見ると、家自体も数カ月ぶりにまともにシャワーを浴びた船乗りのように、身体に浴びせられる水の勢いによろこんでいるようにみえたので(実際久しぶりの雨だったのだ)、彼はますますうれしくなり、すこし遠出をしようと足を公道の方へ向けた。天を見れば、目の中にも雨粒が入りこんでくる。髪からしたたる水滴が頬を伝い首を伝って、衣服の中に入りこむ。彼は傘をあまり好かないので、濡れてほとんど真黒になったアスファルトを踏んで、同じようにこの雨をよろこんでいるらしい木々と、草花と、ひょっこり目の前に飛び出してきたアオガエルとよろこびをわかちあい、鼻歌でも歌いそうになるほど上機嫌に(ずぶ濡れだったが!)散歩を続けた。
小一時間ばかり歩き続けて、なにしろ彼は脚の長いひとだったので、だいぶ遠くまで出てきたとき、1台の真黒い車がすべるように彼の真横にとまった。
「水もしたたるいい男か。なるほど」
運転席の窓があいて、意地のわるい笑みを顔に貼りつかせた先生が顔を出した。
「おや先生、こんな雨の中どちらへ?」
「そりゃこっちのセリフだよ。傘もささないで、あんたってひとは。まだ散歩を続けるかい?それともおれとおうちに帰ってたのしくあそぶってのはどうかね」
キリコはこの申し出を首を傾けて検討し、そうですねえ、とすこし間のびしたような声で云った。
「雨はこの先も何度も降るけれど、先生がこの先何度もうちにいらっしゃるかどうかはわからないですしね」
「悲しいこと云うなよ」
先生は顔をしかめた。
「だってそうでしょう?私がいきなり車にはね飛ばされて死んでしまうとか、先生が不運にも事故にあうとか、可能性なんていくらもあるじゃありませんか。反面、雨のほうは異常気象にならないかぎりは保証されているから……云い方がまずかったですね、要はね、人間関係の一瞬一瞬は、二度と再生不可能な貴重なものだなって、思ってのことだったんですけど」
「ああ、そりゃまちがいなく云い方を変えた方がいい。あんたの気持ちはわかったよ、じゃあ貴重な再会といきませんか。ほら、乗って」
先生は自分が濡れるのも意に介さず車から降りてくると、キリコを押して助手席のドアに押し込んだ。
「先生、お車がずぶ濡れになってしまいません?」
「なるさ。そんなことこのポンコツ相手にいちいち気にしてたってしょうがない。その前に自分の体調に気を遣ったほうがいい。風邪ひいたらどうする」
「ひかないと思います、でも、ありがとう」
「ま、だろうね。あんたは余計なものがなさすぎて、風邪菌一匹入る余地がないってかんじがする」
先生は濡れてくしゃくしゃになったキリコの髪や服を眺め、笑った。
「まあいいさ、帰ったら一緒に風呂に入ってもらうから。おれもまだなんだ、昨日徹夜でさ。くたびれたったらない」
キリコは先生の話に適度に相槌を打ちながら、なるべく椅子を濡らさないように座るにはどうしたらいいのかと奮闘していたのだが、先生はそれに気づいて大笑いした。
「だからいまさら無駄だって。天気予報じゃ明日は晴れるらしいから、あんたも椅子も盛大に干せるよ。だからまともに座んなさいよ」
「なんだかちょっぴりみじめな気持ちになってきた。あんなに気分よく歩いてたのに、屋根のある場所に来たら……」
「ああもう、わるかったよ、あんたの気分を台無しにして……それじゃあやっぱり歩くかい?なんたって久しぶりの雨だし、車なんてあとで取りにくればいい。どうせこの道通る車なんてたいした数じゃないんだし」
キリコがすこし上目づかいに先生を見つめて肩をすくめたので、先生はまた笑って、車を路肩にとめると、勢いよくドアを開けて外へ出た。